臨床法学教育学会 シンポジウム・提言等
●本学会理事会は、2023年3月14日理事会決議に基づき『日本学術会議に関する内閣府方針に対する声明』を発出いたしました。
日本学術会議に関する内閣府方針に対する声明
2023年3月14日
臨床法学教育学会理事会
理事⾧ 米 田 憲 市
内閣府は、令和4年12月6日付「日本学術会議の在り方についての方針」を発出した。
学術会議に関する問題は、菅義偉前内閣総理大臣による、違法な日本学術会議会員候補6名の任命拒否に端を発したものである。しかるに、岸田文雄内閣総理大臣の就任後も、かかる違法行為についての是正はおろか、説明もされないまま、憲法の保障する「学問の自由」を脅かし、ひいては学問の向上発達による利益を享受する国民の利益を損なう危険をともなう内容の法改正が進められようとしている。
日本における法曹養成のための臨床法学教育の実践と研究を発展させる目的で設立され、法学研究者と法律実務家により主に構成される臨床法学教育学会理事会は、2023年3月14日理事会決議に基づき、学術会議による令和4年12月27日付「内閣府『日本学術会議の在り方についての方針』に関する懸念事項」に示された懸念を共有するとともに、
1.政府に対し、令和4年12月6日付「日本学術会議の在り方についての方針」を撤回することを求め、
2.学術会議の自律性・独立性を損なう違法な介入及び法改正に強く反対することを表明する。
(1) 学術会議の自律性、独立性を損なう危険性
「日本学術会議の在り方についての方針」(以下「方針」という。)は、会員の任命等につき「国の機関であることも踏まえ、選考・推薦及び内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」とし、具体的内容を明らかにしていない。しかし、「会員等以外による推薦などの第三者の参画」を改革の内容として提示している。これは、会員選考に関する第三者委員会の設置等により、会員の任命自体に、学術領域の自主的判断ではない第三者が関与する可能性を示す。このことは、第三者の関与を通じて、任命権者である内閣総理大臣が実質的に会員選考のコントロールをすることを可能にする危険性をはらむ。
(2) 学術の自律性・独立性の確保の普遍的価値
学術は、科学者同士の、多様な意見を踏まえた議論から大きく発展していく。その成果と利益を享受するのは人類全体である。日々科学に真摯に取り組む科学者同士が、時に対立しながら、純粋に科学の向上・発展のために何が必要であり、重要であるかを議論し、判断していくことが、科学の発展・向上に最も資する。
だからこそ、日本学術会議の目的は、「科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」(第2条)とされ、この目的を達成するために職務の独立性が強く保障されているのである(第3条)。
このような議論に、例えば政治的判断などの、科学とは無関係の他の基準が取り込まれた場合には、科学とは異質な理由によって結論が左右されることとなり、科学的知見・根拠に基づく最善の提案がなされないことになりかねない。また、異質な基準が取り込まれることにより、本来なされるべき科学的知見に基づく議論の機会自体が失われるおそれすらある。この事態は、学問にとって、その発展・向上がむしろ阻害される可能性、より良い科学的な根拠に基づく選択肢を提示できない危険性を生じさせる。だからこそ学術会議の独立性は強く保障されるべきなのである。
学問の発展を阻害することは、その成果を享受する人類全体の利益を大きく損なう重大な結果をもたらしかねない。学術領域の自律性・独立性は、どのような文化的・歴史的背景があったとしても、最大限保障されなければならない普遍的な価値である。
(3) 方針発出までの経緯と問題点
本学会の理事会声明ですでに指摘したように、2020年に菅元内閣総理大臣がした学術会議会員候補者6名に対する任命拒否は、日本学術会議法第7条第2項に反する違法な行為である。違法な任命拒否を、何らの実質的な説明や対応をすることなく放置したのみならず、具体的な立法事実もないままに、学術会議の独立性を脅かしかねない法改正を進めようとしている。これが許容されるとすれば、日本社会における「法」の意義にさえ疑問が呈される事態である。政府の姿勢自体が厳しく問われなければならない。
違法な任命拒否に端を発した、学術会議の自律性・独立性を脅かす方向での法改正への動きは、法の理念を踏みにじり、学術会議の存在意義、ひいては学術自体の価値の根幹をゆるがすものであり、到底許容されない。
(4) 以上の通りであって、本学会理事会は、
1.政府に対し、令和4年12月6日付「日本学術会議の在り方についての方針」を撤回することを求め、
2.学術会議の自律性・独立性を損なう違法な介入及び法改正に強く反対することを表明するものである。
以上
●臨床法学教育学会オンラインミニシンポジウム
『平成司法改革の研究』を読む
日 程 : 2022年12月19日(月) 18:30~20:30
会 場 : オンライン(ZOOM)
● 第2回 オンライン法学教育セミナー
開催日:2021年11月18日(木)18:00~19:30
会 場:オンライン(ZOOM)
講 師:上松健太郎(当学会会員・名古屋大学法科大学院准教授・弁護士)
「オンラインによるロイヤリングの授業デザイン
~ Scrapbox・Zoom・Slidoで組み立てる創造的な学びの場 ~」
* オンライン授業に限らず、深い学びをもたらすためには、インストラクショナル・デザインの
考え方が極めて重要ですが、上松先生は、この考え方に基づいて授業を設計されています。また、
創造的な学びをもたらすためのオンラインツールの活用にも熱心に取り組まれています。
* 第2回オンライン法学教育セミナーについて、録画公開の予告をしておりましたが、録画公開
作業に手違いがあり公開できなくなりました。申し訳ありません。
悪しからずご理解たまわりたくお願い致します。
● 第1回 オンライン法学教育セミナー
開催日:2020年11月12日(木)18:00~19:00
会 場:オンライン(ZOOM)
講 師:塩澤一洋(当学会会員・成蹊大学法学部教授)
「学生が躍動する法学授業 ―― リモートでもリアルでも能動的学習を引き出す手法とICT活用」
【録画公開】
上記セミナーは盛況にて終了しましたが、講演部分に限り、当学会会員限定で公開します。
下記からご視聴ください。なお、動画にはパスワードがかけられています。パスワードは、
会員用メーリングリストでお知らせします。
● 声明
● 要請
<法科大学院在学中に司法試験受験可とする制度変更は再検討を!>
● 理事長提言
臨床法学教育学会第10回年次大会(2017)理事長提言
―国民との約束〝プロフェッションの養成〟を守るために―
● 創立10周年記念第2回プレシンポジウム
開催日:2017年1月28日(土)
[テーマ]
新しい法曹像を軸とした「教育」と「試験」の統合 ── 司法制度改革の理念の再生に向けて
● 創立10周年記念第1回プレシンポジウム
開催日:2016年7月23日(土)
[テーマ]
法曹養成と法科大学院の論点 ── 次の10年に私たちは何をすべきか?
● 提言
法曹養成制度の検討への臨床法学教育学会からの提言